建物の解体工事には、どんな作業に費用がかかってくるものなのでしょうか。もしも「できるだけ安く抑えたい」と思っても、費用の内訳がわからなければ節約のポイントを考えることもできませんよね。
解体工事というのは、たいていの方があまりなじみのあるものではないでしょう。まずは解体工事の費用のかかりどころを見ながら、流れを確認していきましょう。
解体工事はどのようなところに費用がかかるか
解体工事でもっとも費用のかかる部分が、メインである「建物の解体作業」と「廃棄物の処理」です。ここだけで費用総額の7~8割を占めるといわれています。
残りは重機の回送費・整地費用・付帯工事費用などで、ここに場合によっては追加費用が加算されます。
内訳をさらに詳しく見ていきましょう。
建物解体費
建物本体の解体工事費用は、ざっくりと「建物の構造による坪単価×坪数」で決まります。
目安としては、
・木造:3~5万円/坪
・鉄骨造:5~7万円/坪
・RC(鉄筋コンクリート)造:6~8万円/坪
この金額に、建物広さ(坪数)をかければ大体の費用目安が出るでしょう。
たとえば、40坪の木造住宅であれば120万~200万円あたりということです。
硬い構造体であるほど単価が高価であるのは、解体するのに時間や手間がかかり、その分が人件費などに響いてくるからです。
ただしこの目安は、地域によっても変動があります。さらに、前述したような解体費以外の費目がほかにもあったり、思いがけない追加費用があったりもするので注意が必要です。
同じ木造住宅でも、複雑・頑強な構造をしていたら、鉄骨造よりも高くつく…というような場合もありますしね。
また、地下室があるときはさらに要注意です。場合によっては特殊な重機や埋立て作業が必要になることもあるため、費用は相当分かかると思っておきましょう。
廃棄物の処理代
近年は家庭ごみでも捨てるのにお金がかかる時代です。
解体工事で出た廃材は、単に捨てるのではなく、分別してリサイクルにつなげるため、その作業にかかる手間と費用は相当なものです。
時代の流れで、廃棄物をすべてまとめて捨てる、ということはもうできないのです。分別には手作業でなければいけない部分も多いため、単純に人件費がかさんできます。
また廃棄物の量が多いほど、当然処理代も高額になるでしょう。
重機回送費
建物の解体には、油圧ショベルなどの重機が活躍しますが、解体業者が自社保有していない場合はレンタル代が発生します。また、現場まで重機を運搬する費用も、この重機回送費という費目に入ります。
つまり解体業者もしくは重機の保管場所から解体工事現場が近い方が、重機回送費は抑えられるということになります。
業者によっては、廃棄物を処理場まで運ぶ運搬費用も、この重機回送費に計上している場合があるので、見積書に不明な点があったらすぐに確認してみましょう。
整地費用
解体工事の後に、土地の整地作業があります。コンクリートガラや木片などのごみを取り除き、きれいに整地して更地にします。
この後に土地の売却を考えていたり、新築工事を行う予定でいたりするならば、地盤調査や地盤改良が必要な場合もあります。
建物をすべてなくした状態にならないと地盤の状態はわからないうえに、大規模な改良が必要となったら、思わぬ出費となることもあるでしょう。
付帯工事
付帯工事とは、いわゆる「オプション工事」のことです。建物本体の工事以外の部分の工事、といえばわかりやすいでしょう。
具体的には、建物内の残置物の処理・ブロック塀や門扉の撤去・庭木や庭石の撤去などが挙げられます。
付帯工事の有無や量は、施主によって非常に差異があるところでしょう。ほぼ建物本体のみの解体で済む場合もあれば、外構すべても含めた解体工事を望む場合もありますよね。
工事前の現地調査と見積では、どこからどこまでの解体が必要なのかをしっかり業者に伝えることが重要です。解体してほしくないものまでされてしまった、逆に解体してほしいのに残されてしまった、といった行き違いが起きないように、費用の確認も併せてしっかり希望を伝えましょう。
費用が高くついてしまう場合
次に、一般的な費用内訳以外で「思いもよらぬところで出費があった」というポイントを挙げていきます。
アスベストがあった
工事前から建物内部にアスベストが使われていることがわかっていれば、アスベストの処理費用は見積書に載りますが、施主自身もアスベストが使用されていたことを知らなかった、というケースがたまにあります。
アスベストは人体に大変有害であるため、解体工事の際には飛散を防ぐための対策を行わなければなりません。工事の最中にアスベストの使用が発覚した場合は、そのための費用が追加で請求されることとなります。
地中埋設物があった
こちらも、工事前から地中埋設物の存在がわかっている場合は、見積の段階でその撤去費用を算出してもらえます。
地中埋設物とは、古い井戸や浄化槽、以前の解体工事で出たコンクリートガラやごみなどといったものです。施主も知らないうちに地下に埋められてしまっていて、解体工事で建物が何もなくなってから初めて存在が発覚した、ということはありえる事態なのです。
アスベスト同様、こちらも撤去のためには追加費用が発生します。
立地条件
解体工事現場の立地条件によっては、通常よりも工事費用が高額になる場合があります。たとえば、古い住宅地などで道路も敷地も狭く、現場まで重機が入り込めなかったり、重機の駐車場所がなかったりするケースです。
重機が入れないのであれば、手作業で工事を進めるしかありません。その分作業員の人数と日数が必要になります。
また、重機の作業スペースはかろうじてあるとしても、その日の工事が終わった後の駐車場所がなければ、駐車スペースの確保にも費用がかかるでしょう。
さらに、通行人が多い場所や、学校の近くで子どもの通行がよくあるような現場であれば、安全管理のために警備員の増員を考える必要が出てきます。こまごまとした部分ですが、見過ごせない出費です。
解体工事費用の相場、今昔
建物の解体工事にかかる費用相場は、実は数十年前からほとんど変わっていないといわれています。
工事に使う重機の性能は上がっているし、設備の進歩もして人件費がかからなくなっているように見えるにも関わらず、です。
これは、2002年施行の建築リサイクル法などで、解体工事後の廃材は細かく分別したうえでのリサイクルが定められ、手作業で行う工程が多くなったからと考えられています。
手作業に頼れば、その分時間がかかり、結局は人件費に響くことになるわけですよね。
重機の性能が上がっても、工事費用が下がらないのはそういう事情があるからなのです。
そういったこともあり、無理な値引き交渉はしないほうが賢明です。解体工事でコストを抑えることばかりを考えると、安全管理にしわよせが来てしまい、取り返しのつかない事態に陥りかねません。
きちんと適正な価格帯を知り、業者に「おまかせ」する姿勢が大事ともいえます。
まとめ
日頃、あまりなじみのない解体工事。どんなことにどれぐらいの費用がかかるかを知ることで、工事のざっくりとした流れを理解できるうえ、いざ工事が必要となったときに予算を立てやすくもなることでしょう。
建物本体の解体自体だけではなく、他にも費用がかかる部分もあることにも注意が必要です。特に追加費用に関しては、施主でも知らなかった・気づかなかったという要素がありえるということを知っておきましょう。