人生において、そう何度も「家屋の解体工事」を経験するという方は少数派ですよね。多くの方は解体工事の流れや費用相場などには、なじみがないものでしょう。
今回は解体工事のざっくりとした流れを確認し、その中で費用を安く抑えるポイントというのがどこにあるかも一緒に見ていきましょう。
解体工事の流れ
解体工事のスタートは、まず工事を依頼する業者を選定することからです。インターネットなどで複数社ピックアップしたら、それぞれに現地調査をしてもらって、見積を出してもらいます。見積の内容と業者の対応の見極めから業者を決定したら、契約書を交わします。
実際の工事を始める前にも行うことはたくさんあります。
工事の内容を説明して理解を得るために近隣挨拶にまわり、建物内の片づけを行って不用品を処分し、ライフラインを止める手続きをします。並行して仮住まいへの引越しも行います。
工事開始の際には、まず足場と養生シートの設置から行われます。内装や外構の解体を終えたらいよいよ建物本体の取り壊しを行い、基礎まで撤去したら整地を行って、廃棄物の分別・処理場への運搬で全工程終了となります。
解体工事の流れを大まかに説明するとこのようになりますが、この流れの中で「費用を安く抑えるポイント」はどこにあるのでしょうか。
次項ではその点について見ていきましょう。
解体工事の費用を安く抑える方法とは?
補助金を利用する
近年は、全国どこの地域でも空き家の増加が深刻化していて、空き家問題はいまや大きな社会問題となっているほどです。国や自治体をあげての解決に向けた動きがめざましく、その中の施策として「空き家解体補助金・助成金」というものがあります。
要件や補助金額など細かい内容は自治体によって異なりますが、老朽化した空き家や危険な木造住宅であればほとんどが要件に該当するはずです。場合によっては多額の補助をしてもらえることもあり、知っていると知らないとでは大きな差になります。
申請しなければもらえるはずもなく、また工事をしてしまったあとに申請しても支給してもらえないなど、あらかじめ知らないと損することばかりです。まずはすぐにでもお住いの自治体のホームページなどで、情報を集めてみましょう。
解体ローンを利用する
「安く抑える」という観点からは少し外れますが、解体工事には「空き家解体ローン」というものが使えることがあります。
一昔前までは解体工事に使えるローンはなかなかありませんでした。住宅ローンは新築工事が前提のものなので、建替えにともなう解体工事には使えるのですが、解体工事単体には利用できないのです。
そこに、やはり空き家問題の深刻化を受けて、最近では多くの金融機関から空き家の解体工事に特化したローンが提供されるようになってきました。こちらも金融機関によって要件はさまざまです。利用できるかどうかはあらかじめ確認しておきましょう。
解体工事の費用は、新築工事と比べればそこまで高額ではありませんが、それでもまとまった金額がいるものです。なかなか現金一括で、というわけにはいかないでしょうから、ローンを利用した資金計画が立てられるということになると、ありがたいですね。
繁忙期を避ける
解体工事の繁忙期は、一般的に公共事業が忙しくなる年末から年度末にかけてといわれています。忙しい時期は、安くて良い業者に依頼することが難しかったり、費用が割増になったりもするため、避けた方が良いでしょう。
さらにこの時期は、雪が降る地方では積雪で工事が中断しがちな季節でもあります。地域にもよりますが、冬の割増料金が設定されるようなことも考えられるので、やはり避けた方が無難な時期といえるでしょう。
自分たちでできることはする
残置物の処理
不用品は建物の中に置いておけば、解体業者が一緒に処分してくれます。楽だし手間もかからないし、それがいいのでは、と思いがちですが、少しでも費用を安く抑えたいのであれば不用品の処分はぜひ自分たちの手で行っておきましょう。
なぜなら、業者が不用品を処分すると「産業廃棄物」の扱いになり、処分料が高額になりがちだからです。自分たちで処理してしまえば、一般的な家庭ごみや大型ごみとして捨てられるものもあるでしょうし、まだ使えるものならリサイクル業者や中古品屋に持っていくこともできるでしょう。
少し手間ではありますが、費用の節約と若干の手間は引き換えです。少しでも費用を安く抑えるためには、体を動かすことも必要です。
庭の処理
解体工事に建物本体だけではなく庭の処分も含まれているのであれば、そこも自分でできることは自分でやってしまいましょう。
たとえば、草刈りや庭木の伐採などは、業者にまかせなくても自分たちでやれる部分です。庭石の撤去とまでいくと、素人にはなかなか難しくなるのでおすすめできませんが、できる範囲で庭の処理は行っておくと良いでしょう。
建物滅失登記を自分でする
解体工事後に「建物滅失登記」という手続きが必要になります。「ここにあった建物を失くしましたよ」ということを登録するための手続きなのですが、こちらも解体工事自体と同様、普段耳にすることもない、なじみの薄い手続きであるため、難しくて面倒そうだなというイメージがあるでしょう。
ところが、手続き自体は難しいものではなく、必要書類の記入に数十分かかるのと、費用が1,000円程度かかるだけで終わってしまいます。自分で行っても「手間」というほどのものでもなく完了してしまうのです。
これを業者や専門家に代行依頼すると、4~5万円かかるといわれています。自分で行えば、どれほどの節約になるかがよくわかりますね。
一応、「解体完了から30日以内に手続きをしなければならない」という決まりはありますが、遅れてしまったといって罰則はありません。ただしずっと怠ったままだと10万円以下の過料が下されるという罰則はあるため、工事が終了したらすぐに手続きしてしまうのが良いでしょう。
トラブルによる無駄な出費を避ける
「きちんとしていればこんな出費、もともとなかったはずなのに…」というところにお金を払うことほど、馬鹿馬鹿しいお話はありませんよね。
しなければならない手続きや申請を怠ったり、近隣トラブルを起こしたりということでの余計な出費をなくすことも重要です。
手続きや申請を忘れない
前述したように、建物滅失登記を怠っただけでも10万円以下の過料が発生します。他にも工事によって必要な手続きや申請が遅れたり、忘れてしまったりするだけで余計な罰則を受けるものがあるかもしれません。
業者まかせにはせず、施主も手続きや申請についてきちんと知っておき、失念することのないようにしたいですね。
近隣トラブルを避ける
解体工事には、騒音・振動・粉じん飛散など、近隣に迷惑をかける要因が多々あります。また、作業員のマナーや態度が悪く、近隣住民と直接トラブルを起こしてしまうという事例もあります。
話し合いで解決できればまだいいのですが、最悪の場合裁判にまで発展してしまい、弁護士費用や慰謝料の発生というところまでいってしまうこともあります。こうなると、やはり余計な出費と言わざるを得ません。
こういったトラブルを避けるためには、まずしっかりした業者を見つけることでしょう。そのうえで工事前にはきちんと近隣挨拶を行い、周囲の理解を得てから工事を始めることが重要です。
ただでさえ高額になりがちな解体工事で、余計な出費を避けるためにあらかじめ思いつくものは全部やっておきたいですね。
まとめ
解体工事の流れと、安く抑えるポイントについてまとめてみました。知らなければ実践できないこと、テクニック的な部分などさまざまな側面からのアプローチで、工事費は抑えられるということがわかりましたね。
できることから行って、少しでも費用を抑えながらも満足のいく工事にしたいですね。